芸術を知る11の作品

本質は変わらないまま、松澤の「作品」は驚くほど多様で常に変化をし続けました

7. 「美術の消滅」を実践した「消えていく」美術展〜 「『ニルヴァーナ』展」 (1970年)

万博会場のそばで展覧会自体が「消滅」していく画期的な国際「概念芸術」展を開催。万博に象徴される物質文明へのカウンターパンチ。ニルニル。

「ニルヴァーナ」は、サンスクリット語で「一切煩悩を滅したる境地」を指す言葉。70年8月12日〜14日京都市立美術館で行われた「ニルヴァーナ」展は、松澤が仲間たちとともに企画した日本初の国際的な「概念芸術」展。「物質消滅」、同時に「美術の消滅」に向かう「最終美術」を提示すべく行われました。

かっこかわいいポスターには以下のマニュフェストが。「はなはだしい錯誤である実体を棄てる/物質の哀れな迷妄から去る/無意味な価値の座標軸を変える/ニルニル/われわれは美術の最終形態を開発する/それ以後美術はなくなるという最終美術を初めて提示する/世界の最終美術家たちはここに集合する

(「ニルニル」は、「ニルヴァーナ」から来た言葉遊び、掛け声のようなもので、松澤の作品に時々登場。シリアスなことを伝えつつ、ちょっと遊びを入れるユーモア?は松澤らしいと思います。)

国外14名、国内70余名の参加者があり、作品のほぼ全てが「概念芸術」とされるもので、絵画やオブジェなどの既成の美術作品の形をとらず、文字や写真による作品、または行為(パフォーマンス)によるものでした。

異例だったのは、「美術の消滅」を展覧会自体が実践したこと。3日間の会期で、初日は2階の全室を使い、2日目はその半分のスペース、最終日3日目は一部屋になり、最後は「消滅」したとのこと。

会場近くでは1970年の大阪万博が開催されており、松澤たちには物質文明の権化のような万博への強い対抗意志が。展覧会の準備会議のニュースレターには次のようにあります。「(『ニルヴァーナ』展は)日本万国博覧会に一つの集積断面を見せている物質根幹文明に対する精神根幹文明の主張である。物質構造変革ではなく、精神構造変革であり、精神の共通基盤の拡大を目的とする。」