芸術を知る11の作品

本質は変わらないまま、松澤の「作品」は驚くほど多様で常に変化をし続けました

2. オブジェ大好き?何のハコ?〜「プサイ函」 (1960年代前半)

60年代前半にはたくさんの「函」(ハコ)を制作し伝説の前衛アート展覧会「読売アンデパンダン展」などに出品、話題に。ありあわせの箱をもとに作られた不思議なオブジェたち。おそらく本当はオブジェが大好きだった松澤のオブジェ愛をひしひしと感じる。

60年代前半に松澤は多くの「函」(ハコ)を制作。「読売アンデパンダン展」に出品された「プサイ函」はよく知られ、のちに1982年にも62年ごろの作品による「プサイの部屋からの27の函」という展覧会が開かれています。

「函」の多くは、ありあわせの箱を用いたもので、色々なものが入っていたり、いなかったり。

美術評論家の千葉成夫さんは、1983年エッセイ(「松澤宥・ψの宇宙」(諏訪幻想社 1985)P.74)で「これらの函たちは本質的な意味でかなりエロティックなものだという気がする。」と述べています。また2018年の講演の中では一つの箱( 「プサイの部屋からの27の函」の中の23番目「プサイ函」)が諏訪の御柱を連想させるとも語っています。プサイ函の中に祭儀・祭式・祭具を思わせるものがある、とも。(【宥学会・遊学塾】第46回「松澤宥論・第二回: 松澤宥幻想」講師:千葉成夫)

これらの函が何を表現しているのか、もちろん正しい答えはありません。見れば見るほど不思議な函。

たくさんの函を作ったあと、松澤宥は1964年に「オブジェを消せ」宣言を行い、「もの」を作らなくなります。これらの函の「オブジェっぷり」をみるにつけ、松澤は本当はオブジェが好きで好きで仕方がなかったのでは?と想像してしまいます。