芸術を知る11の作品

本質は変わらないまま、松澤の「作品」は驚くほど多様で常に変化をし続けました

4. 史上初?見えない作品による美術展〜 「荒野におけるアンデパンダン展‘64」 (1964年)


究極の「観念芸術」「非物資」作品
と言える「広告」によるアート。諏訪の山の中での「見えない展覧会」。物質まみれの現代文明への痛烈な批判か。もしかすると、今も展覧会は続いているかも?あなたも出品してみませんか。

「オブジェを消せ」との声を聞いた年の年末、「荒野におけるアンデパンダン展‘64」は行われました。『美術ジャーナル』の誌面にのった松澤による作品募集の広告を見てください。

美術展の会場は、諏訪の山中、霧ヶ峰の美しい湿地地帯である七島八島高原の「ツンドラ地帯」。会期は12月3日未明〜9日未明ですが、作品の搬入、搬出日は「過去 現在 未来」。ある意味いつでもどうぞ、ということ?出品手数料は「無」。出品方法は、「あなたの出品物はあなたの手元に置いて、それから発する無形のもの(虚の作品)を会場まで届けてください」と、もしかしてテレパシーで出品してください、霧ケ峰の山中に「作品」を「観念で」届けてください、ということ?

この呼びかけにアーティスト、評論家たちは見事に応えました。瀧口修造、池田龍雄、辻本和子、前田常作は、作品を送ったことを松澤に郵便で知らせており、この展覧会に「参加」したことがわかっています。実際には彼らの他にも無言で「観念」を送った人がいたかもしれません。

何のためにこの作品が産まれたのか。物質まみれの社会への痛烈な批判とも受け取れます。美術家で松澤の研究者でもある嶋田美子さんは、以後の彼の活動を通してみたうえで「彼が目指したのは、(中略)志を同じくするアーティストとともに、コミューナルな活動を通して美術を、知覚を根本から変えていくことにあったのではないかと思われる」(「ニルヴァーナからカタストロフィーへ 松澤宥と虚空間のコミューン」(オオタファインアーツ)P.46)と言っています。仲間とともに、意識を、世界を変えていく、そんな思いが背景にはあったかもしれません。そしてその後も彼の「見えない革命」は続きます。